◆◆クラフト史・頼 空陀◆◆ 


    

   〜作曲担当二人(三人)? 作詞担当二人?〜 
     

         
 
 全国各地をまわるツアーをこなすうちに、三井、森谷、松藤、濱田、この4人の体制が、徐々に整いつつあった。
そしてこの頃のクラフトは次なるシングル盤の曲をそろそろ考えなければいけない時期になっていた。
前2作とも、盟友“さだまさし”の書き下ろした曲でヒットを出し、クラフトというバンドの名を世に知らしめたのも事実であった。
しかしこの次は自分たちのオリジナルで勝負したいと誰しもが思っていた。
以前よりバンドのオリジナル曲(特にメロディ)は殆ど三井一人が書いていた。

デヴューアルバム“ふつつかながら”の作品をみれば一目瞭然である
(ベースの三森は、在籍時に彼らしい優しい感性の作品を数曲残している。
“ハンドクラフト”収録の『さらば夏の日』、アルバム未収録の『引っ越し』、
また、ギターの森谷も『まさか君がお嫁に行くなんて』という曲を作っている)。

 そんな中、濱田は自作の曲をいくつかメンバーに聞かせるようになった。
もともと彼は曲作りや詞も作ったし、クリエイターとしての資質を持っている人物であった。
彼がはじめてクラフトのメンバーに披露したオリジナルは『たまの休みに』であった。
詞・曲ともに濱田の作であったその作品は、後のクラフトの3枚目のアルバム『スケッチブック』に収められている。
多くのオリジナルを書いていた三井のアメリカ・ウェストコースト的な作風とは、色合いの異なるこの曲は、
クラフトの世界をもう一歩広げる役目を果たしたようである。

 以後、三井と濱田、ふたりのサウンドメイカーの存在によって、クラフトサウンドはその裾野をもっと広げて行くのであった。
同じく、森谷と松藤による自作の詞の提供は、クラフトのオリジナル楽曲を作って行くうえで、強力な役割を果たしていた。
 また、森谷もこの頃より曲をつくるようになって来ていた。
『似顔絵』(作詞は木村和夫)のような森谷らしい優しさ溢れる曲は、クラフトのもう一つの別の面を見せることになる。